風のなかで咲く
*** この商品はブックパレットのサンプルです。***
フォントサイズ
100%
白い空の下で
淡い花びらが揺れている
誰かに見つけてもらうためでも
立派に見せるためでもなく
ただ風の来るほうへ
細い茎を預けながら
ひとつ
またひとつと
小さな色を灯している
強い風が吹けば
身を低くして
雨に打たれれば
花びらを重ねるようにして
静かに夜を待つ
倒れないことが
強さなのではない
揺れながら
何度でも空を見上げることを
この花たちは
知っているのかもしれない
昨日までの私は
傷つかないように
心を固く閉じていた
期待しなければ
悲しまなくてすむと
自分に言い聞かせていた
けれど
こんなにも頼りない茎の先で
花は惜しげもなく開いている
明日には散るかもしれない
誰にも名前を呼ばれないまま
季節が過ぎるかもしれない
それでも
今ここにある光を受け取り
透き通るような色で
今日を咲いている
遠くへ行けなくてもいい
大きな花でなくてもいい
隣の花と比べることなく
自分に届いた風のなかで
自分だけの揺れ方をすればいい
やがて夕暮れが来て
空の色が薄くなっても
花たちはきっと
明日の光を疑わず
静かに目を閉じる
私もいつか
こんなふうに生きられるだろうか
傷つくことを恐れず
変わっていく季節の中で
柔らかな心のまま
立っていられるだろうか
答えはまだ
風の向こうにある
それでも私は
花びらの間を抜けていく
かすかな光に手を伸ばす
揺れることを
弱さと呼ばずに
今日という場所で
私も小さく
咲いてみようと思う
