抽象写真「CORE」シリーズの被写体は、壁、主にコンクリート壁である。デジタルカメラが出力したRAWデータの現像時にトーンカーブや色温度設定を操作し、被写体にかすかに乗っていた色彩や明暗を強調した。
私にとって、写真は自己確認手段であり、生存証明である。実際の見た目・色合いにとらわれず、事象の核(CORE)の表現を目指したこれらの作品群が、今の私にはとてもしっくりとくる。それは言語中枢を通らず、感覚のCOREにダイレクトに訴えかける。「CORE」シリーズは、自身の内面と共鳴する画を、身体の外側にある壁の歴史、すなわち壁の傷みや汚れの中から発掘しようという、実験的な試みでもある。
写真では撮影者がシャッターを切る時の主観が存在するはずで、もちろんこの「CORE」シリーズにも私自身の感覚の核が確固として表れている。通常、鑑賞者は撮影者の主観を探るであろう。ただ、この作品集においては、撮影者である私の主観よりも、鑑賞者ご自身の感覚に意識を向けていただきたいと思っている。