この本は筆者の職務記録であり、体験記です。
ただその仕事は一般に思い描く「お役所仕事」とは少し異なるものでした。
最初に税金の調査を担当したときは「月夜の晩ばかりじゃねぇぞ」と脅され、建築指導課のときは土地バブルが起きた頃で、右翼の大物の土地取引の届出を価格指導し、農業振興課のときは国の会計検査院の指摘を大逆転で回避し、健康増進課のときは新生児マススクリーニングにタンデムマス法を導入する端緒を開き、保健福祉事務所では数々の医療相談に奮闘し、監査事務局ではいくつかの要改善事項に取り組みました。
本書はこれらをまとめた回想録であり、多くの部署を転々としたことから、都道府県や政令指定都市の仕事を横断的に知ることができます。
本書の「仕事は飲み屋通い?」「土地取引に現れた人たち」「労働問題の解決に奮闘する公務員」「劇的大どんでん返し」「赤ちゃんの健康を守るタンデムマス法」「医療相談?」などの章では公務員の仕事の多様さに驚くかもしれません。
「違和感というヒント」の章は、監査の職員として違和感をヒントに県の課題や改善点を見つけた記録です。
ここでは自治体の監査において、まだ少数派の改善を指導する「要改善事項」という指摘事項を取り上げていますので、都道府県や市町村の監査の方々に少し目新しい視点を提供できるのではないかと考えています。
この章の「監査の虎の巻」は初心者用の参考書になります。
一般の読者は「代表監査委員」で代表の情熱を感じ、「要改善事項等」で公務の意外な落とし穴や改善の物語を知ってもらえたらと思います。
また、コーヒーブレイクの「私のクマ対策」は今話題のクマ対策を、「台風発生予防装置」は台風を予防するアイデアを、「高額療養費の受給意思の確認通知」は役所における事務の改善案を、「社会へ船出する前に!」は義務教育の改革案を提言していますので、ぜひご覧ください。
本書が公務に日々奮闘されている皆様、将来、公務員への就職を希望するかもしれない方々、単に興味本位で読んでくださっている皆様方へのエールになれば、これ以上の喜びはありません。